【Quan’s eyes】2021年総括、中国バイオ企業 / 新薬の「販売承認の取得」と「医療保険リストへの収載」
2021年、中国企業の新薬の研究開発が大きな収穫をあげた一年でした。2015年に始まる中国政府の大きな政策転換によって、新薬の研究開発が一気に進み、その成果が出つつある感があります。
1. 2021年 / 新薬の販売承認の件数と対象疾患
中国の新薬企業各社は、自主研究開発に加えて、外部らかのライセンス導入により、開発パイプラインの充実化を図っています。それらの内、2021年には、40件の新薬の上市承認がおりました。昨年度の倍近い数字となっています。疾患別では、40件の内、19件が抗癌剤、11件が漢方の新薬、3件が自己免疫疾患治療剤、3件が抗ウイルス剤、4件が抗感染症剤となっています。
2.2021年 / 新薬承認の特徴
(1)抗癌剤が脚光を浴びています。販売承認された40件の内、約半数が抗癌剤。その内、8件が血液癌、11件が固形癌です。また、CAR-Tが2件、PD-(L)1抗体が3件、含まれています。 2019年、中国の新規癌患者数は440万人、2024年には500万人が見込まれており、日本の5倍以上の数字です。更には、unmet medical needsでもあることから、中国企業に熱が入っていることは頷けます。
(2)企業別では百済神州(Beigene)が4件の新薬承認を、次いで、基石薬業(Cstone),栄昌生物(RemeGen)、再鼎医薬(Zai Lab)が、夫々、2件と続きます。1年間に複数の新薬承認を取得する企業がこれだけ存在しているのは、中国の時代背景を如実に表しているように思います。
(3)漢方の新薬が、中国政府の振興策の追い風に乗って、11件の新薬承認がおりました。これは、過去5年間で最多です。疾患領域としては、肺/抗ウイルス、ウイルス感染に伴う炎症治療剤等が含まれます。
3.2021年 / 新薬の保険リスト入り
従来、医療保険償還医薬品リストへの収載はジェネリック薬が主体でした。それがここへきて、新薬にも門戸が開かれて来ています。2021年末、中国企業の自主開発による新薬の複数が保険償還リストに新たに収載されました。
<2021年/医療保険リスト化された中国国産の新薬>
中国企業 | 対象薬剤 | 販売承認の年月 | 医療保険リスト収載年月 |
恒瑞医薬 (Hengrui) | 抗癌剤(PARP阻害剤) | 2020年末 | 2021年末 |
栄昌生物 (RemeGen) | 抗癌剤(HER2) 国産初の抗体薬物複合体(ADC) | 2021年6月 | 同上 |
同上 | 自己免疫疾患治療剤(SLE) | 2021年3月 | 同上 |
諾誠健華 (InnoCare Pharma) | BTK阻害剤(リンパ癌) | 2020年末 | 同上 |
中国企業の研究開発にかかる新薬の承認と共に医療保険リスト入りが相次いだことから、巨額の投資が必要な研究開発とその後の事業化による投資の回収のリンケージの道筋が拓かれつつあると言えます。
3.現状認識と今後の展望
中国は、様々な矛盾をはらみながらも経済の躍進は著しいものがあり、更には新しい時代への生き残りをかけてイノベーションの推進が声高に叫ばれている社会背景にあります。 その追い風の下、強力な投資が継続している新薬の研究開発分野でも一定の成果が出つつあることを上記の新薬承認数の増加が物語っていると思います。 中国企業の新薬も玉石混合の時代が続きますが、日本としては、早い開発段階から見極めて価値のある新薬を導入していく必要があると思います。